サイレント・クリスマス...1話 

街はクリスマス あなたの好きな
きよしこの夜が鳴り響いていた…

::: 前提 :::
クリスマスのお話です。ポケモン世界に季節の変化があるかどうかわかりませんが、
パラレル的な感じで。
大好きな「THE BACK HORN」というバンドの一曲、「羽根〜夜空を越えて〜」に激しく心を動かされ、
その歌詞を意識して書いています。というか激しく引用しています。
この曲をBGMにして読んでくだされば、一番楽しめるのではないでしょうか。
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この季節、街は赤と緑で鮮やかに染まる。
ひいらぎの実の赤と。
もみの木の緑と。
金色銀色に光るベルや星たち。
子どもたちは無邪気に笑い、恋人たちは寄り添って…

そう、今日は、クリスマスイブ。

街はにぎやかで、笑い声と歌声がいつになっても止むことはなかった。
夜のパーティの準備をしたり、プレゼントを用意したりで、クリスマスは不思議とみなの心を浮わつかせ踊らせるもの。
しかしそんな街のにぎやかさに取り残された旅人もいた。

「そっか。今日はクリスマスイブなんだね」
「旅してたらあんまり“今日は何の日か”とかわかんないモンだな」

ユキナとソウは、旅の合間に寄った街で、今日がイブだと知った。
夢中で旅を続けてきた二人は、なかなか季節の変化も気付きにくいものだった。
二人は街のベンチに座り込み、にぎわう街の様子を眺めはじめる。
すると、ふと、後ろから歌が聞こえてきた。
この日にはお馴染みのメロディー。
二人にはそれが何の歌なのかすぐわかった。
だが、あのお馴染みの歌詞がない。

「ぷ〜ぷりゅぷ〜…ぷ〜ぷぷぷ〜…」

歌声の主は、プリンであった。
もともと歌うことが得意なプリンだが、このプリンは特別歌が上手いと感じられた。
二人はベンチに座ったまま後ろを向いて、静かにその歌を聞いていた。

パチパチパチ…

プリンが歌い終わるやいなや、ユキナは無意識に拍手を贈っていた。
その音に驚いて振り返るプリン。
ユキナは少し興奮気味で話し始める。

「こんにちは。今の『きよしこの夜』、すっごく良かった!あなたも、クリスマスが好きなんだね!」
「ぷぷ?ぷーぷー。」

ユキナの言ったことがプリンに伝わったのか、プリンは嬉しそうに笑った。
そんなやりとりを見ていたソウも、優しい表情を浮かべていた。

「そうだ、素敵な歌を聞かせてくれたお礼!これあげるね!」

ユキナはそう言ってかばんから天使の羽をかたどったアクセサリーを取り出した。
先程立ち寄ったフレンドリィショップで買い物をしたとき、店員から、
「当店からのクリスマスプレゼントです♪」
と笑顔で渡されたものである。
しかし自分を着飾ることが苦手な彼女は、それをどうしたらいいか困っていたところであった。

「あなたなら似合うし…ん、これでよしっと!」

ユキナはこれまた店でもらった赤と緑のリボンにアクセサリーを付け、それをプリンの手に巻いてやった。

「ぷーぷー!!」

笑顔で喜びをあらわすプリン。
しかし、その顔が急にこわばった。
驚いてプリンの視線の先を追うユキナとソウ。
そこには、マフラーで顔の下半分を覆った、青年が立っていた。

「プリン、こんなところにいたのか」

口元がマフラーで覆われていたため青年の声は少しこもっていた。
それでもその声は、大人を感じさせる低い声だがどこか透き通るような、キレイな声だと感じられた。
青年はプリンをひょいと拾い上げる。




「…帰るぞ」
「あ、あ、あの!そのプリンのトレーナーさんですか?」
「…そうだけど…」
「その子、とっても歌が上手いですね!」
「…?」
「さっき、『きよしこの夜』を歌ってたんです。すごく上手で、私、ほんとに感動…」

ユキナは声に詰まる。
なぜか、どうしてか、青年がものすごく恐い顔をしていたから。
そして、彼はプリンをにらみ、言った。

「お前…歌ったのか」
「ぷ〜…ぷうう…」

「ふざけるな!!!」

青年の怒鳴り声があたりに響き渡った。ユキナは唖然として一歩も動けない。
その言葉の理由がわからない。
今まで後ろで黙っていたソウが、おもむろに口を開いた。

「なんだよ、その言い方。コイツは、プリンの歌を褒めてんだぞ?
 お前が怒る理由なんて、あんのか?」
「そ…ソウ!」

初対面で、しかも年上の相手にぶしつけな言い方をする少年に戸惑うユキナだったが、彼女もその問いの答えを知りたくて、黙って青年の顔を見た。
青年は、プイと二人に背中を向け、その場を立ち去ろうとする。

「待って!」
「…何も知らないのにウルサイんだよ。俺たちは…歌を捨てたんだ。俺も、コイツも。
もう、歌わない。…必要ないから…」
「…え?」

やはり青年の言うことは理解できなかった。
ただ、どうしてかとても悲しく感じた。
歩きだし、徐々に遠くなる青年の姿。
ユキナは、その青年を、追いかけたいと思った。
“歌を捨てた”だなんて。あんなに歌が上手なプリンなのに。悲しすぎる。
“何も知らない”から、何も言えない。
だから、知りたい。
何も知らないくせに…なんて、言わせたくない。
彼を追いかけ、駆け出そうとしたときだった。
ユキナより先に、彼を追いかけた者がいた。

「ユウシくん!待って!」

その声に驚き立ち止まる青年。

「…おばさん…!」
「久しぶりね、ユウシ君とプリンちゃん。最近、顔、見せてくれないから、心配してたのよ。」
「…」
「ねぇ、今年もいつものように、ウチのパーティに来てくれるわよね?」

青年は、うつむき、答えない。
“おばさん”らしき人も、青年のその反応に、表情を暗くさせた。

「来てくれないの…?」
「すみません、おばさん。俺たちにできることは無いんです。…すみません」
「そんな…。でも、待ってるからね。きっと来てね…」

青年は返事をしないままペコリと頭を下げ、そしてまた歩きだした。
“おばさん”はその背中をじっと見つめていた。
そのやりとりを眺めていたユキナとソウ。
ふとソウが小声で言った。

「お前は、どうしたい?」
「…あの人を、追いかけたい。話を聞きたい」
「そっか。それなら俺は、あの“おばさん”に、聞いてみるわ」
「うん、じゃあ、いってきます。」

ニコっと笑い、ユキナは青年を追いかけるため走り出した。
ソウはそれを見届け、「面倒なことになったな」と思いながら、立ち尽くす女性に声をかけた。

「あの…すみません。」


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