■■■ エアームドGET話...5話 ■■■ ユキナはジュプトルをボールに戻し、小さなエアームドと共に仲間たちのところへ戻った。 そこではソウとクスイが待っていた。 「どうなったの!?」 クスイが答える。 「勝負は…エアームドが勝った。あいつら、風魔団は、走って逃げていったよ」 その言葉を聞いてほっと安心するユキナ。 だが、どこにもエアームドの姿は見えない。 不審に思い聞いてみる。 「で、エアームドはどこに行ったの?」 この質問に、少年二人は少しうつむく。 なかなか答えてはくれない。 先に顔を上げたクスイがは、あるひとつの岩を指差して、静かに言った。 「あの岩の…後ろだよ」 どうして、そんなに辛そうに言うのだろうか。 エアームドが勝ったのに。 どうして。 ユキナの安堵感はすでに不安に変わっていた。 小さなエアームドを連れて、その母のいる場所へと歩き出す。 この岩の後ろに… 「…そんな…!!」 「きゅ…きゅうきゅうーーーー!!!!」 そこにいたのは、確かに、エアームドであった。 しかし、 鋼の身体は傷つき、 地面にぐったりと倒れ、 まぶたを閉じ、 ピクリとも動かなかった。 もう動かない。 この鳥が大空に羽ばたくことは、もう二度と、無い。 「きゅう!きゅう!きゅう!」 眠ったような自分の母親に必死で呼び掛ける、子の姿があった。 だが、母親は目を覚まさない。 何も反応が返ってこない。 それでもなお、エアームドは小さな体で周りを飛び回り、叫び、呼び掛け続ける。 小さな子は、『死』を知らなかった。 「あのエアームド…子供がいたのか…」 「ヒック…キモリを連れて行ったのだって、大事な子供のためだったの…うゥ…」 ユキナは涙が止まらなかった。 鳴き続ける子エアームドの声を聴く度、涙が溢れてどうしようもなかった。 「僕は、風魔団が一人いなくなったのに気付いて、そいつを探してたんだ。 そしたら、ソウ君に会って…」 「お前に言われたとおり俺達はエアームドを助けようと、元の場所に戻った。 俺らが着いたそのとき、大きな音がして…勝負が決まったみたいだった」 ネイティオは地面に倒れ、風魔団の青年は慌てて逃げ出した。 エアームドも、それを見届けた後、長い闘いに疲れ果て、地面にそのまま墜落してしまった。 傷も深い。 クスイもソウも、かばんの中からありったけの傷薬を取り出し、エアームドに使った。 だが回復することはなかった。 もう、ある線を、通り越してしまっていたのだ。 二人の少年は、成す術もなく、エアームドが目を閉じていくのをただただ見ているしかなかった。 動かない鋼の体には、徐々に灰が降り積もっていく。 ユキナはそれが許せなかった。 「お墓、作ろうね…」 灰をほろうために、恐る恐る、身体に触れた。 冷たい… それは、鋼の体のせいではなくて。 もう、生きていないという証拠であり。 ふたたび涙が止まらなくなったユキナは、今だ泣き叫び続ける小さな子を、手に取り、抱き締める。 「あなたは、こんなに、あったかいのにね…」 「きゅう…きゅう…」 ユキナは涙を拭い取り、意を決したような表情で、母親エアームドを見る。 そして告げた。 「あなたの大事なお子さんは、私が預かります。きっときっと大事に育てます。 強く、どんなヤツにも負けないくらい、強く育てます。 だから、だから、 安心して…眠ってください…」 「きゅう…」 もう一度、小さな体を抱き締めた。 永遠の眠りについたはずのエアームドが、少し、微笑んだ気がした。 3人は、ハジツゲタウンのポケモンセンターで一晩泊まった。 その夜は、三人とも口数が少なめだった。 そして、次の朝。 「じゃあ、僕は行くね」 クスイは眼鏡をかけ直しながら言った。 「クスイさん、いろいろありがとうございました。結局迷惑ばかりかけて…ゴメンナサイ」 「迷惑だなんて思ってない…そう言ったはずだけど?」 「なあクスイ、あの風魔団って、何者だったんだ…?」 「…飛行系のポケモンを捕獲し、それを使って何か企んでるみたいだね。 何にせよ、君達は顔を覚えられてしまった。気をつけたほうがいい」 ユキナの顔に怒りが見えた。 「風魔団…絶対に許さない!」 それを聞いたクスイは、にっこりと優しく微笑み、ユキナの肩に触れた。 「ユキナさん。焦らないで。あなたは必ず強くなれる。僕が保障するよ」 「あ、ありがとう…」 最初は申し訳なさそうな表情をしてたのに、怒りに奮え、今は照れ隠しに必死だ。 くるくる表情を変えるこの少女を、クスイはもう少し見ていたいと思った。 だが、クスイにもやらなければならないことがある。 「またどこかで会おう。僕は、あなたにまた会いたいから」 そう言ってクスイは背を向け出入口に向かって行った。 途中、足を止め、後ろを振り返る。 「ソウ君、ユキナさんに負けないように、頑張ってね」 クスッ、と笑い、ふたたび歩き出した。 「ちえ。付け足しみたいに言いやがって。俺だって強くなるからな!」 「クスイさん…さようなら」 クスイは外へ歩き出した。 二人はしばらくその行方を見守っていた。 「ユキナ」 ソウはユキナの頭をポンっと叩いた。 「気を取り直して行こうぜ。お前の、新しい仲間と。」 その日ふたりは、ユキナの提案で、一日かけて火山灰を必死に集めた。 そして、ガラス細工のお店へ持って行き、それぞれ好きな色のビードロを作ってもらった。 ユキナはそっとビードロを吹いてみる。 それは、とても暖かい、優しい音色で。 この音が、あのエアームドに届けばいいと思った。 今は土の中で眠る、この子のお母さん。 私たちは、必ずこの地に戻ってきます。 どうか、見守っていてください。 「きゅう!きゅう!」 初めて見るビードロに興味津々なエアームドは、ユキナの周りをパタパタ飛んだ。 ユキナはふふっと笑って、今度はその新しい仲間のために、ビードロを吹いた。 その音色は、やはり、暖かかった。
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あとがきと補足 |